◆ 必要光路長ゼロ ◆ |
リレーレンズ群を通った光束は左右のアイピースホルダー後端に第2焦点を結ぶため、必要光路長が実質的にゼロになります。これにより、そのままの状態で全ての望遠鏡で合焦が可能。旧来の双眼装置のように、エクステンダーレンズの併用による不本意な高倍率化に悩まされることはありません。加えて、第1焦点の位置がバレル先端に近いため、通常のアイピース単体と同じ感覚でレデューサーやバローレンズの併用が可能になり、倍率選択の自由度が大きく広がります。特にレデューサーの併用による低倍率化はメリットが大きく、星雲星団観測において威力を発揮します。 |
◆ ナイフエッジ光路分割ミラー ◆ |
双眼装置の要である光路分割光学系には、通常のビームスプリッタープリズムではなく、ナイフエッジ光路分割ミラーを採用。極めて高精度に研磨されたナイフエッジ直角プリズムの外面に、反射率99%のディエレクトリックコーティングを施しています。主光束を左右に等しく分割反射させるため、旧来のビームスプリッターで発生しがちだった左右の色調差や明度差、コントラストの低下等も僅少で、本来の像質を損なわない非常に明瞭なイメージが得られます。更に、左右に分かれた光束を直角に曲げるエレメントにもディエレクトリックコーティングされた高精度な平面鏡を採用。全光路でプリズム類を一切使用しないことにより、長大なプリズムの中を光束が通る際に発生する球面収差や色収差、光量損失等の懸念も全くありません。 |
<付記>光路分割ミラーで光束を左右に等分するため、射出瞳は左右対称の半月形になります。各光束の性質は理論的にオフアキシス光学系(シーフシュピーグラー等)と近似しており、光路分割による分解能・デフィニションへの影響は僅少で、輝星にスパイク(光芒)等も発生しません。 |
◆ 視野径&低倍率観測 ◆ |
正立系等倍リレーレンズの唯一の問題点は、第2焦点面における視野径に制限が生じる点です。本製品の場合、実効視野径はφ17.4mmで、通常の双眼装置(φ22mm程度)よりも少し小さくなっており、長焦点・広視野アイピースでは視野周辺にケラレが生じます。大まかな計算式で表すと、焦点距離(mm)×見掛視野(度)=約1,000以上のアイピースではケラレが生じ、それ以下なら全視野が使用可能です。弊社のアイピースで具体例を挙げると、例えばEF-16mm/60゜(16 x 60 = 960)や、GS FMC PL-20mm/50゜(20 x 50 = 1,000)あたりが使用可能上限となります。
「なんだ、それでは十分な低倍率広視野が得られないではないか」と思われるかもしれませんが、心配はご無用です。この問題を解消するオプションとして、専用品の0.66×レデューサー(別売)が用意されています。これを装着すれば、例えばEF-16mm/60゜なら「24mm/60゜」、PL-20mm/50゜なら「30mm/50゜」のアイピースを使った場合と実質的に同じ倍率・実視野が得られるため、双眼装置としては必要十分な低倍率・広視野を確保することが可能になります。更に、レデューサー併用時でも必要光路長は僅か18mmのため、ほぼ全ての望遠鏡で合焦が可能です。 |
◆ 高倍率観測 ◆ |
本製品は全ての望遠鏡でエクステンダーレンズなしで合焦が得られるため、高倍率観測の際には、かなり短焦点のアイピースを使うことになります。しかし短焦点アイピースは双眼使用の際の軸保持がシビアになり、ちょっとした差込加減の違いで左右の光軸が微妙に狂ってしまいがちです。
本製品は、全てのバローレンズが「表示通り」の拡大率で併用可能です。高倍率観測には短焦点アイピースではなく、「バローレンズ×1+中焦点アイピース×2」の組み合わせを強くお勧めします。中焦点アイピースのほうが軸保持の許容範囲が広くなるので安定した双眼視が可能になり、更にアイレリーフが長くなるので覗き易くなります。 |
◆ ニュートン系への使用 ◆ |
本製品はニュートン系望遠鏡には理想的な双眼装置です。ニュートン式は通常バックフォーカスが短く、既存の双眼装置だとそのままでは合焦が得られないため、拡大率の高いエクステンダーレンズを併用することになり、結果的に低倍率での観測が物理的に不可能でした。しかし本製品であれば必要光路長がゼロのため、ほぼ100%のニュートン式望遠鏡で確実な合焦が可能になり、快適な正立像で、低倍率での星野観望から高倍率での月惑星観測までフルに楽しめます。 |
◆ 屈折&カセグレン系への使用 ◆ |
本製品を屈折やカセグレン系の望遠鏡に使用する場合でも、もちろん追加光路長なしで確実な合焦が得られ、直視であれば正立像が得られます。しかしながら、対空観測のために天頂ミラーや天頂プリズムを併用した場合、若干奇異な「倒立裏像」になってしまいます。
この問題をすっきり解決するためには、ペンタプリズムの併用を強くお勧めします。バックフォーカスに或る程度余裕のある機種であればKasai 31.7mmDXペンタプリズム、余裕が無い場合はKasai 31,7mmハーフペンタプリズムを併用すれば、屈折やカセグレン系望遠鏡でも、快適な正立像での対空観測が可能になります。 |
◆ 各部仕様&付属品 ◆ |
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筐体の主要部分はCNC切削加工&アノダイズによる金属製。アイピースアダプターにはコレットチャックによる回転締付式を採用。アイピースのバレルを周囲から均等に締め込むため、非常にしっかりした固定ができると共に、確実なセンタリング状態が常に維持できます。右目側には回転ヘリコイドによる視度調整機構が完備。目幅調整はアイピースアダプターユニットを左右にスライドして行なう方式で、58mm〜74mmの範囲で調整が可能。接眼部取付用バレルはスリップに強いテーパー型を採用し、先端には31.7mmフィルターネジも完備。容量に余裕のある大型ハードキャリングケースも標準付属しており、双眼装置本体に加えてアイピースやプリズム類もまとめて収納可能です。 |
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◆ 総合適性 ◆ |
数ある双眼装置の中でも、ELS正立双眼装置は唯一無二のユニークな存在です。100%の望遠鏡で確実な合焦が可能で、低倍率も使えて、かつ正立像が得られる・・・既存の双眼装置の問題点を一挙に解消した本製品は、ユーザーに新鮮な驚きを与えることでしょう。低倍率広視野での星雲星団観測から高倍率での月惑星観測まで、或いは正立像を生かした地上観測等も含め、様々なシチュエーションにおける観望・観測をフルカバーできる万能双眼装置として、全ての望遠鏡オーナーに等しくお勧めしたい「革命的」な製品です。 |
<Patents: TW 105211430 ・ CN 201620803363.3 ・ US 15/661,163 (pending)> |